本願寺前の仏具屋・八田保商店。
ご縁があり、表具の相談事で親しくお付き合い頂いております。    変わったものを置いておられたりして覗くのが楽しみなお店でもあります。   今日は、依頼のあったものを持参して。  お仕事の話が終わり、店主と四方山話をしているうちに < 香 > の話になり、楽しく色々見せてもらっていると・・・・・・・。

『 これ、何? 』 ( 店主、わたしより若いもので。 誠実で 実に気のいい彼です。 )
『 沈香の粉末です。 』 ( 手の中におさまる位、小さな小瓶。 )  
《 沈香 》。  少し焚くだけでも、作られた香りとは全く違う独特な香りが漂います。  高価な香です。  日々に焚くのは・・・・・・。
香木から <きざみ> や <角切り> の形にされたものを使う事が多い この香。

『 粉末とは珍しい。 』 
『 たとえば、香木で念珠の珠を作ったりする等、加工する時に出た粉です。 』 
『 へ~。 よくあるの? 』               『 最近はあんまり 入らなくなりました。 』
『 へ~。 これ、いい香からのもの? 』        『 いいものからのものです。 』
『 へ~。 これで、おいくら? 』           『 ○○○です。 』
『 へ~。 ひょっとして、お買い得? 』       『 お買い得です。 』
『 へ~。 』   

お買い求めです!    3月の彼岸法座で焚きしめます。    お楽しみに!

何をした憶えもないのに、結構目立つ<傷>が頬に・・。 カミソリで切ったか ささくれ立った指先で引っ掻いたか。      そう言えば、と思い出した15年も前の昔話。

伏見の忙しいお寺の法務員として、一日10件も15件もお参りしていた頃のある日。
朝早くからバイクで走り 3件ばかり勤め終えた時、 『 あ痛~! 』。
右まぶたを <蜂> に刺されてしまいました。   痛くてしばらく顔をおさえてうずくまっていましたが、時間に追われている身。  みるみる腫れあがってくる顔をミラーで見ながら、そのまま次のお参りのお家へ。

『 おはようございます・・・。 』
『 おはようございます、まあ!  どうされました?! その顔! 』
『 ・・・・・・いや~・・わるさがバレて、女房に殴られまして。 』 (笑)
『 まあ~、おじゅっさん! 面白い事言わはるわ~。 』 (大爆笑)

あんまりウケたもんで、次のお家でも。
『 えらい腫れてるで。 どうしはった? 』
『 いや、浮気がバレて 女房に殴られましてん。 』
『 はっはっは~。 そうかいな、そりゃええわ! 』 (大爆笑)    またまたおおウケ。

痛いのも忘れて いく家いく家で同じ事を挨拶に爆笑の嵐の中、気を良くして あるお家へ。

『 まあ、どうされました・・お顔が・・。』
『 いやあ、女房に殴られましてねえ。 』
『 ・・・まあ。 そうでしたか。  失礼しました。 』  しばし沈黙の後、仏壇に向かわれるおばあさん。
『 ・・・・・・・・・・・え~と。 すみません、冗談です。蜂に刺されたんですよ。 』
『 蜂に?  ・・そうですか、蜂に。 ・・・そうでしょうねえ。 』 (ま顔)

・・・・・・ 『 いや、おばさん。ホントに蜂ですよ、蜂にさされたんです! 』
『 そうでしょう、蜂でしょう? 蜂ですよ。 』  (ま顔)    『 いやいやいやいや、ホントですよ! 』

《 ウソから始まると、言えば言うほど 真実から遠ざかる 》  ・・・格言のような言葉が出来てしまった日でした。  調子にのったわたしが悪いだけですが。   きっと未だに、女房に殴られたと思っておられるでしょう。

この傷、もう口が裂けても 女房のせいにはしません。 これ以上彼女を凶暴には出来ません(笑) スンマセン。



お参りの読経が終わるまでジッと待っている< 猫 >たち。
終わると ひと鳴きして撫でてくれ、と近づいて来きます。 賢いモノたちです。

そうしている中、少し離れたところでジッとしている一匹の猫< クウ >。
もう15年位の付き合いがある老猫。      若い猫が遊んでいるうちにはやって来ない< クウ >。

ひとしきり遊んだ他の猫が居なくなったら、ゆっくり立ち上がり 横にやって来ます。 撫でてくれ、と手を手繰り寄せます。  
「老いる」という事は、他のひと(猫?)を思いやるこころが備わるという事でしょうか。  < 待つ力 >が備わるという事でしょうか。   ・・・・なあ、< クウ >よ。

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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