頬に傷。

何をした憶えもないのに、結構目立つ<傷>が頬に・・。 カミソリで切ったか ささくれ立った指先で引っ掻いたか。      そう言えば、と思い出した15年も前の昔話。

伏見の忙しいお寺の法務員として、一日10件も15件もお参りしていた頃のある日。
朝早くからバイクで走り 3件ばかり勤め終えた時、 『 あ痛~! 』。
右まぶたを <蜂> に刺されてしまいました。   痛くてしばらく顔をおさえてうずくまっていましたが、時間に追われている身。  みるみる腫れあがってくる顔をミラーで見ながら、そのまま次のお参りのお家へ。

『 おはようございます・・・。 』
『 おはようございます、まあ!  どうされました?! その顔! 』
『 ・・・・・・いや~・・わるさがバレて、女房に殴られまして。 』 (笑)
『 まあ~、おじゅっさん! 面白い事言わはるわ~。 』 (大爆笑)

あんまりウケたもんで、次のお家でも。
『 えらい腫れてるで。 どうしはった? 』
『 いや、浮気がバレて 女房に殴られましてん。 』
『 はっはっは~。 そうかいな、そりゃええわ! 』 (大爆笑)    またまたおおウケ。

痛いのも忘れて いく家いく家で同じ事を挨拶に爆笑の嵐の中、気を良くして あるお家へ。

『 まあ、どうされました・・お顔が・・。』
『 いやあ、女房に殴られましてねえ。 』
『 ・・・まあ。 そうでしたか。  失礼しました。 』  しばし沈黙の後、仏壇に向かわれるおばあさん。
『 ・・・・・・・・・・・え~と。 すみません、冗談です。蜂に刺されたんですよ。 』
『 蜂に?  ・・そうですか、蜂に。 ・・・そうでしょうねえ。 』 (ま顔)

・・・・・・ 『 いや、おばさん。ホントに蜂ですよ、蜂にさされたんです! 』
『 そうでしょう、蜂でしょう? 蜂ですよ。 』  (ま顔)    『 いやいやいやいや、ホントですよ! 』

《 ウソから始まると、言えば言うほど 真実から遠ざかる 》  ・・・格言のような言葉が出来てしまった日でした。  調子にのったわたしが悪いだけですが。   きっと未だに、女房に殴られたと思っておられるでしょう。

この傷、もう口が裂けても 女房のせいにはしません。 これ以上彼女を凶暴には出来ません(笑) スンマセン。



西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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