この間書き込んだ《 ラーメン修行僧 》。
『 少々話しかけるとも・・・ 』 の、少々の話とは何か? という反響が多いので、補足を。

『 このスープの出汁は何でしたっけ? 』  食べすすめながら店主に聞く娘。
『 ・・・・エソです。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・蒲鉾の材料に使われる事が多い魚です・・・・。 』  店主。
『 ああ、そうだ。 ありますねえ、書いてある。 そおかぁ、あれかぁ。 島根出身なんで蒲鉾は。。。 』  語る私。
『 ( 穏やかに微笑み、むこうに行く店主 ) 』  

何だ、あの白鳳時代の仏像のような微笑みは・・・・。

後ろの陳列棚に目をやる。  数種類の出汁用魚の横に< 能登の塩 >、 そうか 塩は能登産で。
醤油は何処のだ? 醤油には少々興味があるぞ私は。  ん?島根! 仁多!

何と、ここで島根産に出会うとは! この、いかにも全てに拘りぬいて来た彼が選んだのが< 島根 >の醤油とは。 

『 あれ?! 島根産の醤油を使っておられるんですねえ。 わたし、島根出身なんですよ。 』  さっきも言ったぞ。
『 ・・・・・そこのに お世話になっています。 』  店主。

お世話になっています! なんと。  普通なら、< 使っているんです > とか味がどうとか言いそうなところを
< お世話になっています > 。  そう言った後は微かに微笑んで下を向いて麺を手に。  さすが、修行僧。
30歳代 にしか見えないのに、あんたは 高倉健さんか!と 下世話につっこんでしまいたくなるのを 抑えるわたし。

まあ、これだけの事でした。  こんなところで許して下さい。

わたし・・不器用なヤツ ですから・・・。

4月27日、益田市美都町・妙蓮寺さま、永代経法要のご縁。 
《 美都温泉 》 のある静かな里。  本堂堂宇の立派な彫り物、  屋根上高く乗せてあった400年前の材木そのままに下ろし移築された梵鐘堂。  深みのある院内にてのはじめてのご縁でした。 組内であるのでご住職・坊守さま・若院さまには普段から色々お世話になり、お顔親しきお方々ではあります。  休憩中 『 どっちを飲まれます? 』 とご住職が運んでこられたのは、珈琲と< 生たまご入り・ゆずっこ > ( ゆずっこ=美都町名産ゆず果汁飲料 )。

『 えっ、生たまごですか? ・・・オロナミンCに生たまごみたいな? 』 
『 そう。 元気がでるよ。 』 
『 ・・・では、それを。 』   想像していた味とは違い、< フル―チェ >味に近く 爽やかな味わい。
『 あれっ? 美味しい。 』  と失礼な事を言ってしまいました。

なごやかに法要が勤まり、控室で帰り支度をしているところへお出で下さったご門徒のおじいさん。
『 これを。 』  と言葉少なに手渡して下さったのは、山菜・< ウド >。

お礼を言いつつ手にした< ウド > はあたたかく。
法要聴聞中ずっと大事に持っていて下さったであろう人肌の温もりが。  いつ渡そうかと、ずっと持っていて下さったんですね・・・。 

笑顔でお顔を見せに訪ねてくださったお方もありました。  皆々様、あたたかなご法縁の一日、ありがとうございました!

《 一人一光 》。 どなたであれ真摯に丁寧に生きているひとには、誰かに語るべき大事な話( 教え )が必ずひとつはある、と。

先日、『 出産したらしばらく行けなくなるから行っておいた方が良いと言われた。 』 という娘に誘われて久々にラーメン屋なるものに。   どうせなら少々足をのばしてと、京都も北の方 白川通りあたりへ。

『 ここか? これ ラーメン屋か?』   『 地図からするとここしかない・・。』  『 ほんとか?』
看板もない、のれんにも何にも書いてない・・・おや、申し訳程度に小さく 《 一三〇 》 。
《 伊佐夫 》 のはずだが、ロゴがかわったのか。 

ラーメン屋なら 『 へい、らっしゃい! 何名様?! 』 と威勢良く迎えられそうなのに違う。
カウンター10席ばかりの喫茶店の様な明るい店内、 数名の客にラーメンを作っている細身のふつうの家着風の若い店主がチラリとこちらを見て 『 いらっしゃい。 』・・・・消え入りそうな声。      大丈夫か。 

店内には様々な干し魚。   そう、魚貝スープの店。  娘は< 羅臼昆布と帆立  >、わたしは本日のスープ< エソ >を。     かなりの時間待つ。    来ました。    飲みました。 

『 う・・・うまい。 』  顔を見合うふたり。  黙って互いのを貰い合う。    『 う・・・・うまい。 』

随分と研究されたのであろう事が十分うかがえる 。  極々あっさり、実に繊細な上品な味。

静かに次のひとのものを作る髭をたくわえた店主は、どこか修行僧にも見えてくる。  ひたすら道を求め、味を求めて来られたのであろう。   そのため どこか 身体も壊しながら・・( 個人の感想です ) 

少々話しかけてみるが、穏やかに振り向かれるだけでほとんど話されない。
何かスゴイ話、語るべき教えを 持っておられそうなのに・・・それを引き出す器量がこちらに無いのが口惜しい。

仏法は鐘と一緒で、大きく叩けば大きく響く。小さく叩けば小さく響く。     《 問う者 》 が問われる、と。

今度行く機会があるかどうか。  大きく叩いて話を聞きたいひとであった。

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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