< 大谷本廟 >。
京都・東山五条、清水寺近くにあります。  親鸞聖人の墓所である為、『 遺骨の大部分は自宅近くのお墓に納めても、一握りは 聖人・同じ念仏の道を歩まれた方々と一緒に・・。 』 と 日本全国から遺骨を持って(分骨)納めに来られる場所です。 何百年とそれを受け止められてきた、浄土真宗の施設であります。 毎日 何家族もの方が、故人の遺骨を持参し受付に並ばれています。

 お墓については事情により様々な問題が出てまいります。
『 子供・後継者がいない・・どうなるのか? 』  『 嫁いだ娘ばかり・・うちのお墓はどうなるのか? 』
      ・・・・・・沢山のご相談のお話をお聞きします。  都会の京都であれ、山村部の島根であれ。

今日、二十歳の息子と二人で 納骨に行って参りました。
何年かに一度、島根から本廟納骨のご遺骨を預かって京都に走ります。  歳をとった自分のかわりに納骨してきて下さいと・・。
 今日の件の依頼主のおばさん(80半ば?)、13年前にご主人が亡くなり遺骨はずっと身近にご一緒されていました。お子さんはおられないので、いつかは全骨 大谷へというご相談は何年も前から受けておりました。
 『 おばさん。ご主人の遺骨が近くにおられなくなったら 寂しくなられるでししょう? おばさんが亡くなったら、私が責任もって一緒に大谷へ納めに行きますから、それまでずっと一緒でいいんですよ。 』

 そう言っていたのですが、この度 納めようと思い切られた様です。 『 わたしが生きている内に、出来ることを・・・。 』  お願いに来られた姿はやはり お寂しそうでした。  ・・・・そして今日、準備された大谷本廟への永代経懇志を納めお勤めに会い、納骨して参りました。



 来月、得度習礼を受け僧籍を受ける予定の息子。 おそらく 何故自分も行かなくてはならないかも分らないまま、『 行くぞ! お前も来い。 』 で、しょうがないからついて来た彼です。   果たして西蓮寺の後を継ぐかどうかは まだ分らないにしても、今日の参拝の行き帰りで 大谷の始まり・このお骨の話・お墓に対する考え方・・色々話しました。  そして、はじめて大谷本廟のお勤めにも会い 遺骨を納めにいく僧侶の後ろ姿を見て 何かを感じてくれたでしょうか・・。 

 もし、何かを感じてくれていたら、おばさん・亡きご主人が縁となって下さった今日が とても大きな一日となるのですが・・。   いや きっと 大きな大仕事となって下さっていると思います。

  大雪の地方のニュース映像を目にすると、そこに暮らす方のご苦労を思い胸が痛くなります。
京都・伏見は積雪0ですが、非常に寒い一日でした。
朝、バイクで走りましたが、手袋をしていないかの様に指先が痛くなり 着いたお家の前で身体のアチコチで指を温めないと玄関を入れません。 お部屋は暖められていて、お勤めするうちに身も心も溶けてゆきます。
 < あたたかい >事の有難さは、辛い寒さを通らないと判らないのでしょうか・・。
しばらくすると 暖かい部屋を有難く思った事もどっかに飛んで行ってしまって・・・< なれ>てしまうのは早いです。

 『 あたり前の事って、有難い事の積み重ね 』 ・・・との言葉があります。

< 最初から あたり前の事 >などあるはずは無く、すべて最初は < 有難い事 > で、そのひとつひとつが積み重なってゆくうちに、有難い事をスッカリ忘れて < あたり前 > しか残らなくなってしまいます。
部屋を暖めて待っていて下さった あたたかいお心さえ、すぐに忘れてしまうボンクラな私・・。

 お隣さんが九州に旅行に行かれました。 『 これ、ホンの手土産です。 』 と、明太子。   『 いや~いいんですか? 好きなんですよ、ありがとうございます! 』      ・・・・また、そのお隣さんが旅行にいかれました広島に。 『 これ、もみじ饅頭です。 』   『 いや~いつもすみません。 ありがとうございます! 』

 旅行好きなお隣さん、今度は北海道に行かれました。   ・・・帰って来られたはずなのに・・・。
『 お土産来た? ・・そう、まだ・・。』   『 出会った? そう。 なんにも言われない? ・・そう。 』
『 どうしたんだろう? 』  『 何か うちが悪い事したか!?  なんで持って来ないんだぁ!! 』

 コワイですねえ。  < 有難い >事は 積み重なると < あたり前 >になり、なんとそれを通り越すと< 不足 >
になってしまうんですよ。    コワイですねえ。  ・・・この喩えはフィクションですよ・・・一応、念の為言っときます(笑) 

 わが身の今の < あたり前 > が、実は < 有難い事 > と振り返れる 『 鏡 』 を持ちましょう。 

 文章を書く事が多い方とは 知っていました。
お話をしていて流れから何気なく出された < 原稿用紙 > ・・・・・・『 ん~~? 』

 端っこに < 本間用紙 > と入っています。
 
『 これ、本間さんのオリジナル原稿用紙ですか? 』       『 そう。 横に広い角が書きやすいから。 』
  ・・・・へ~~。 かっこいい~!       なんて言っていたら、横におられた御人、『 俺のも あるで。 』
     えっ ・・・『 出た~。 』 松本さんの < 松本用箋> 。

 絶対、万年筆ですよね。 インクにもこだわりの色がありますよね。
    ・・・・・・何を あたり前の事を・・と言いたげな眼差し。

 いつか 作りたいですね、 < 栗山用箋 > 。   しょうもない事なんか書けなくなりそうですが・・。

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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