西蓮寺に帰山途中、大田市大代町の明円寺さまに立ち寄る用あり。

地図で最短距離を調べると、中国道≪ 三次 ≫IC を降りて日本海側・大田市に向かう道が。 ( みよし・・と読みます )  ICを降りて、中古車に付いていた古い< カーナビ >の言うとおり走り始めると、ドンドン細い道へ・・・。

 鉄道マニア好みの≪ 三江線 ≫が走る川沿いの道。   一台が走る幅のみで、対向車が来るとどちらかがバックしてすれ違いながら・・・。    来るなよ、来るなよ・・と願いながら、心臓に悪い走り。    すれ違うドライバーの目が、『 なんで お前がこの道走ってるんだよ。 』 と言っています。

 途中、我慢できず< カーナビ >に謀反をおこし、川を渡って違う道へ。
少々反対方向へ走って、やっと 安心できる道発見。    
    ・・・『 道の幅も教えてくれよ・・。 』  と言いながら、約束より1時間遅れで到着。  すみません。

 『 どの道で来られました? お教えすれば良かったですねえ。 』
穏やかなご住職、綺麗な坊守さま、『 こんにちは!』と次々挨拶に来てくれる元気な子供さん達。
    庫裡から見る緑溢れる庭、『 舞台ですねえ。 』と言葉がもれた≪ 浄土変相図 ≫のような本堂。

 しまった。     何一つ写真を撮らせて貰っていません。
 

 

   『 浄土曼荼羅 』。
『 観経曼荼羅 』・『 当麻曼荼羅 』とも呼ばれますが、正式には 『 浄土変相図 』 です。
   浄土の様子が中央に描かれ、その回りに ( 浄土を観るさまざまな方法 ) や、( 仏の世界から見た、人間のさまざまな姿 ) が、細密に描かれてあります。
 『 仏説観無量寿経 』に説かれてあるところを画にしてあり、その経文も書き込まれてあります。
                      浄土の仏方、蓮華中に生まれる姿、そして浄土に生まれた いのち を歓迎する踊り・・・。

 

 洗いをして表面の汚れを取り去り、 裏打ちして折れ痛みを修復すると、より一層鮮やかに。 やすらぎの世界が。

 本当にこのまんまの浄土があるかどうかで無く、この画で この経典で私に何を伝えられてあるのか・・が大事な事は分っています。

 ですが・・・。     本当に こうあってほしい・・と願う時があるのも正直なところの私です。
   近しいひとの ≪死≫ に直面すると、より強く感じます。
 
 全く恥ずかしいことです。 全てのいのちを等しく感じているとは決して言えません。 
              恥ずかしい事です。                 

 京都に向かう道中、中国道の小さなPA( 真庭PA )で昼食を。
岡山の山奥、平日という事もあり作業員風とドライバー風の一人での客がチラホラ。

 テレビもなく格別見る景色もない一人テーブルの目の前にある「 ミニポスター 」。  食べながら凝視。
 『 < まにわバ―ガ― >か・・・。 ここだけのバーガーかな? 』      『 新見名物・千屋牛入りコロッケ・・・・コロッケ!?    コロッケバーガーで550円とは結構な値段・・・・いや、失敬。 』      『 地元産トマト・・蒜山ジャージのヨーグルトソース・・なるほど。 そう言えば子供が小さい時、蒜山にいったなあ。  ・・・この白いのは? 豆腐か・・豆腐? 豆腐・・攻めてるなあ。 』 

『 さっきから誰もこれ注文してる声を聞かないけど、何セットキープしてるんだろう?  コロッケは冷凍できるけど、豆腐はなあ・・。あまったら困るよなあ。  そうか! 油揚げ野菜定食って書いてあったなあ、さっき。 それでもだめなら、この味噌汁の具か!  なるほど。 ・・・きっと一人で食べながら目の前の< ミニポスター >を見つめているおじさん達みんな、同じ事を考えてるんだ。  それで、みんな 味噌汁をかきまわして 2~3回頷いてるんだ・・。 』     んな、アホな。  

 『 パンが・・ああ、バンズって言うだ。 パンでいいよな、挟んでるパンで。  何なに・・< きよみどり >を練り込みました・・鳥身を練り込んでるのか?  ああ、豆か。  きよみどりって豆ねえ。 』     『 < 日本一といわれるきよみどりを使用 >?  ・・・誰が言ってるんだ?  いや、失敬。 < 日本一の >でなく< 日本一といわれる >としてあるのが奥ゆかしい。  きっと多くのひとが言ってるんだろうなあ、わたしが知らないだけで。  いや、知らない事だらけ、お恥ずかしい。 』

 『 豆乳スープセットで680円か・・。 他のセットが無いのが又強気だなあ。 う~ん、豆腐をコーヒーで流し込むのもなんだしなあ。 味噌汁・・いや、無いなあ。 やっぱり ここは豆乳か・・。 』

 『< ご当地バーガーコンテスト・中国地方東部地区予選会・審査員特別賞受賞 >か・・・。  高校野球の地区大会で期待のピッチャーがいたけど、2回戦敗退・・・・みたいな・・・。 全国は遠いなあ・・。  いや、失敬。 次はグランプリでしょう!  いや、まだ食べてないんで いい加減な事言っては失礼でした。   どうしましょう? 』

 『 さて、ご馳走様でした。 いや~、一人の昼食のいい話相手になってもらいました。 これだけ色々思いを巡らせてくれたポスターはなかなか無いですよ。   じゃ!  ・・・・・そうか、それで おじさん達、さっきから席を立つ時 軽く手を挙げてるんだ・・。』

      いや、あんただけだろう!
 

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

Copyright © 2010 Sairen-Ji Temple. All rights reserved.