この夏、台所改修いたしておりました。
何年も前からあれやこれや考え思案しておりました。

①台所床に歩くとベコベコ沈む箇所があり、調べてもらうと床下に白蟻被害が見受けられ。すぐに対処せずズルズルと先延ばししておりました。

②年7回の法座のおりに、女性お世話方の皆さんにお斎・お昼食を用意して頂いております。
昔ながら「外台所」中心にて、タライに水を張っての腰をかがめての洗い物。寒い時期でも蛇口からはお湯は出ず、本堂のストーブで沸いた大ヤカンのお湯を何度も運んで使って頂くのがせめてもの・・。各お寺さまの立派な台所を目にし、皆さまのおうちでは蛇口からお湯が出る時代になっている事を思い、足腰しだいにイタシそうに黙々と作業くださるお姿を横目でみながら・・。

屋内で・お湯を使えて・立って作業頂ける台所を目指すことに致した次第です。もちろんシロアリ駆除・防蟻処理とともに。
・・・里の過疎化・年々のお参り状況を思えば、果たしてこの先何年これまでのようなお斎を皆さまとご一緒出来るお座が開けるだろうか・・・との思いも頭をよぎりましたが、今ご一緒下さる皆さまを大事に。そして今まで長く台所に立って下さった多くの皆さまの思いを繋ぐことを思い。そして歴代のご苦労のせめて真似事くらいはさせて頂いて、だからこそのこの先を!と自分に言い聞かせる為にも。   などとなどと、いろいろ思いは駆け巡るものです。

『奥~さん、あれはどこにありますか~。』『あれはどこですか~。』の声が飛び交っていましたが、なるべくどこに何があるかを誰でも分かりやすく収納を。 ( いや、それでも飛び交うでしょうが(笑)・・それも台所の活気にうちとして。 ) 

配膳の為の重い膳棚。落とせば確実に骨折するであろうスチール製の巨大な膳棚を外の物置から男2~3人で命がけで?運んでは、終えれば運び仕舞いをしていた不便さを解消するために、台所と座敷間の押し入れをぶち抜いて双方から出し入れ出来る膳棚スペースに。( 姉の発案です、さすが。 ) 

壁を抜いてひとつのスペースにして流し場と調理台を真ん中に。 

普段は不必要であっても、法座には生き生きとする大台所となりました。
ひとが集まる「お寺」。 


みなで、尊い命に手を合わせ一緒に頂く事も法座の大事な時間です。 (昨年の報恩講写真より)

10月29日(金) 当山報恩講です。 午前9時半より。
ご講師先生には、温泉津の西楽寺・菅原昭生師をお迎えいたします。 ( 20年以上ぶりのご来寺。広くご活躍の先生、ホームページも何と素晴らしい。検索ワード《温泉津・西楽寺》で、西楽寺ホームページに参れます。この西蓮寺ホームページ開設前に参考に何度も見させていただきましたが、とてもとてもあの様にはまいれませんでした。 )  ご聴聞楽しみであります。

皆さまお誘いあわせでのご参詣・ご聴聞をお待ち申し上げております。 拝

7月7日、前日のひどい雨も落ち着き小雨の午前九時半、当山西蓮寺にて夏法座「安居会」開座。 
堂内始まりはほんの数人でありますが、本気でご聴聞をとの方々。

そして心強いのはこのお座終えたら改修するため、長く親しみご苦労頂いた外の水場調理場を使用するのは最期という事でお集り頂いた台所お手伝い精鋭部隊6人。  坊守と姉合わせて計8人。 総代男性3人。   大阪より帰って一緒に勤めてくれる弟。

「お参り叶いませんが」と仏前にご芳志郵送下さった方。  「明日はお参り出来ませんがお昼食の時にみなさんで」と葡萄を沢山届けて頂いた方。   「夏法座にはこれでしたね、お供えいたします」と素麺を送って下さった方。  「法座に使ってください、夕食の時にも食べてくださいね」と夏野菜を沢山運んでくださった方。   「明日はお参りさせて頂きますがご予定があろうかと先に持って来ました。 休憩の時のお茶菓子に」と手作り菓子を「これはご住職に」とお酒とおつまみまで添えて坂道を登って来て頂いた方。

前もって清掃奉仕頂いた方をはじめ、わたしが気付く数日前から思って下さってあった沢山の「思い」を心強く頂きお勤めさせて頂きます。 

台所お手伝いの方々の手も空いて、皆さん本堂に座ってくださる午後休憩の後の最後のご縁は少々変わったかたちで。
数日前からひとり密かに企んでおりましたが、本人には一切言っておりませんでした。
父が亡くなってから12年の間に2回この本堂で法話をしてくれた弟。2回とも八月命日の父法事と兼ねて皆さんと勤めたこの夏法座であったはずです。 以来「どうだ、今度お話してくれないか」と言っても「いやあ、自分はお話はやっぱり苦手だ」とずっと断られていました。

無理はいえませんが、ではこの形ではどうだろうかと思いつきました。≪ 対話式ご法話 ≫。
ふたりで正面に分かれて椅子に座って、私が質問する形で弟・淳之師のお話を引き出す・・・いや引き出すというか。  演台に立ってではなく、ふたりで何気なくしゃべっている時に何とも味わい深い話を聞かせてくれる彼です。   その話を皆さんにお聴き頂きたく思いまして。

突然にふられたにもかかわらず、苦笑いしながら出て来て座ってくれました。30分ほどの時間でしたが、良かったと思います。  わたしも良かったですし、「いいお話聞かせていただきました」とのお声を何人もの方からお聞きいたしました。  泣いてる方までありました。泣かせる話が目的ではありませんが、こころが通じ合った事に変わりありません。その人にしか作りえない時間と空間です。

「 いやあお兄ちゃん。 今日は僕のカブを上げてくれてありがとう。 」
法座終えてすれ違いに声をかけてくれました。

こちらこそ。    
今年は父の13回忌にあたります。法事はおくれて来年勤めさせて頂こうとおもいますが。
父の微笑む姿が思い浮かぶ、良きご縁。みなさま、ありがとうございました。

表装のご依頼。
ご実家にあったお内仏(お仏壇)にお掛けされてあった三幅のお軸、本尊絵像・十字名号・九字名号、大きさ50代(縦34.8㎝×横12.1㎝)。 日々永くお礼されてあったであろう事を思わせる古色と少々の痛みが見受けられます。

若きご夫婦の新居には大きな「壇」を安置する事は難しいとなれば、小さいサイズの新しい「壇」とご本尊をお迎えすることは容易でしょうが、ご両親方が朝に晩にこの前に座って両手を合わせておられたご本尊を何とか新居に・・・とご住職に相談され、以前わたしとこの形に表装した事を憶えていて下さったご住職がご縁を繋いでくださいました。

古くても傷んでいてもそんな事は全く問題ではなく、ひとにとってはどうであれ自分にとっては「この仏さま」が大事である、という思いにとても共感いたします。
お会いした事のない方々の物語、お顔を思い出しながらという訳にはいきませんが、数世代の長い歴史の場面場面を想像しながら作業させていただきました。 薬品は使わず湯水で洗いにかけ表面汚れを落とし、 明るい色調の裂地を廻し。

ひとりで作業していると実に「こころころころ」と、なぜこんな事を思い出すんだろうという所までこころは飛んでゆきます。この世で一番「速い」のは想像の翼であるそうですが、まさしく。
遠い昔、お弁当に付いていたひとつの小さなビニールの花を気に入って何度も投げては拾っていた孫の為に、次に帰った時に喜ぶだろう事を楽しみにしてでしょう、お菓子の空き箱いっぱいにビニールの花を集めていた老夫婦。  二人にとってはビニールの花は人と見え方が違って宝物にみえたんでしょうね。一緒に食べていた方たちの花もお願いして貰って集めた宝物。
しかし次に帰った時にはその孫はもうビニール花には見向きもしなくなっていました・・・。

それでも、、いつまでもその箱は大事にとってありました。

そんな事を思い出すまで 「想像の翼」 は、時空を超えて飛んでゆきました。

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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