袈裟・法衣・打敷の修復を手掛ける工房が、近所の商店街内のギャラリーで作業の様子を公開していると。
ここ伏見にて作業をしておられる事は知っていましたが、訪れた事はありませんでした。 ものは違っても同じく修復をする者として、そして僧侶として。 興味をもってドアを開きました。
普段、目にする織物の打敷よりもかなりボリュームのある刺繍打敷の修復をされていました。
石見神楽の衣装の様に厚い刺繍にガラスの眼。 立派なものですが、真っ先に思ったのは 『 どうやって畳んでしまうんだろう・・・・? 』。
法要・行事によって掛け替えるもの、外したものはしばらく畳んでしまっておいています。 この度綺麗に修復されても畳む度に傷んでいきそうで扱いの怖さがよぎってしまいます。
七条袈裟の修復の様子も見せて頂きました。 裏裂地を替えて、荒れた表裂地部分に針を入れて、紐を替えて・・・。
纏い着ける時に 同じところが折れ・擦れるので、その部分だけを修復していただけるのは有り難い事です。
職人さん方の丁寧で確かな仕事を見せて頂き、名のりもしない私の質問に快く答えて下さるスーツの方のお人柄に、会社の< お人柄 >を感じさせて頂きました。
色衣の修復もされていました。 これも傷む箇所は決まっているんですよねえ・・。 畳み線が擦り切れてくるし・・。
いずれも新しく求めれば大変高価なもの。 直せるものならば・・。
そして、それ以上に。
古くなったものを捨てるのは簡単、一瞬。
でも、それを求められた昔々の方々の< ご苦労と思い >を思えば、何とか直して飾りたい・身に付けたいと、修復を選択される方が多くおられる事は嬉しい事です。 たとえ、買うより高くついたとしても。 ( かな?)
葉脈のみにした< 菩提樹の葉 >に描かれた仏画。
菩提樹といえば、お釈迦さまがその樹のもとに座し お悟りをひらかれたという、仏教では特別な樹。 その樹の実を繋いで念珠にしたものを よく目にします。 これはインドで描かれたものだそうで、「 掛け軸に 」というご依頼です。額装にしてあるものは見かける事はありますが、掛け軸にと・・・・・。
実は以前にも同じ方から同じご依頼があって、何パターンか軸装して納めた事があるのですが、気に入って 頂いていたんですね・・・というか、まだ持っておられたんですね ( 笑 )。
そしてマタマタ実はですが。 これが大変面倒で難儀な事がありまして・・・・。
掛け軸は当然 巻き下ろしが出来ないといけませんが、葉の <背骨 > のところが太すぎて割れ・折れしてしまい、しなやかに曲がり伸びしないのであります。
つまり、掛け軸に表装するのは無理、ですから アクリル・ガラスで押さえて額装にしてあるものばかりという訳です。
しかし。 それでも 『 よ~し、何とかしてやろうじゃないか! 』 と立ちあがるのが栗山表具。
後ろから< 背骨 >を少しずつ少しずつ削り取り < 骨抜き >? にしていきます。 決して決して表に刃がいかないように・・・手の震えを止め、息を止め・・。

そして、どこの厚みも同じにしてから和紙で 裏打ちし、
数日乾燥させてから、これを本紙として掛け軸への表装が始まります。 こんな感じの掛け軸になります。 ジャジャ~ン!
はたしてこの努力、知って頂いているでしょうか・・・・・・・・。 いや、努力を振り回すのは恥ずかしい事でした。 いいのが出来た、と喜んで頂けたら良いだけでした。 ・・・ おはずかしい。


