『 もう ダメじゃろうねえ。 この度で最期にしよう・・・。』

昼過ぎ、78歳の老母が唐突に言いました。
長年、使ってきた < おくど >さん。     すでに何度も修複を重ね、それでも歴戦の傷み見かねるものがあります。  電気よりもガスよりも信頼厚く付き合ってきた母にとっては、悲しい決断であったと思います。

 法座の度に、どれだけ沢山のご飯を炊いてきたでしょう。 どれだけ沢山の< お煮しめ >を、 味噌汁を作り続けてきたでしょう。

 沢山のお手伝いのおばさん方の声を聞き、冬には 温められる <おでん> を覗きにきた子供達の歓声を聞き、きっと 楽しい日々であったに違いありません。

 今朝、お手伝いくださる方と話している内に そろそろかなあ・・と思っていた事を決断したようです。
< おくどさん >を前に相談しました。  遠くないうちに ガスコンロが並びます。
言葉を喋るなら、なんと語るでしょう。      せめて、雄姿を写真に。
     戦友の < 大釜 >とも一枚。
  お疲れさまでした。    ありがとうございました。

 29日の当山報恩講が近づいてまいりました。
西蓮寺より早く勤められる 専称寺(23日)・安楽寺(26日)にお参りしながら、準備しております。

昨日24日は、午前中 総代さん方が掃除に来て下さいました。 わたしはここを・・とずっと前から決められていたかの様に、次から次へ それぞれの場所で汗して下さいます。


午後は内陣仏具の 『お磨き』 に来て頂きました。今回は須津集落の方々、海の男が磨きます。

 綺麗な光を身に纏いました。 磨かれる前は黄色い光ですが、真鍮磨きで磨かれると白く光りはじめます。なんとも穏やかな光です。

 『 信は荘厳から 』 ・・・という言葉があります。
本堂・庫裡・内陣・境内地・裏山。  何人もの方々の手で整え、荘厳し法要の日をお迎えします。

15日に京都に出て来てから今日までの一週間・・。
 恐ろしく忙しい日々を過ごしておりました。

11月1日から 祇園の画廊で始まる 『西松凌波』女史の個展にむけての表装が、その大きな理由です。
明日22日から暫く 島根ですので、今日までに全てを仕上げて納めなくてはならず・・・。
 その間にめずらしく お参りが数件。      なんとか 今日の日を迎え、ここに座っています。

 
作品は実にさまざまな表現で楽しく仕事をさせて頂きました。
   墨流し・マーブル・紫墨・古代文字に英文・・・画と書が独特のバランスで同席しています。

 鎌倉から駆けつけられた女史 同席のもと、祇園・俵屋画廊に納める事ができました。  喜んで頂いたご様子。   一安心。   さあ、明日から島根 報恩講シーズンです。            走れ、栗山!

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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