なかなか手をつけていなかった額装に着手。  さて、どうしましょう・・。

 内田あぐりさんの鉛筆画。 随分以前の作品との事。
ふつうのマットを使っても面白くないですし、仰々しい縁にもしたくないですし・・。   
     で、表装裂を廻して『 和 』のような『 洋 』のような感じに。  
   ふっくらとした少々良い裂地なんですが、どう?


      同じ所に並ぶ( と思うんですが、並ばないかも。 ご依頼者は同じ方。 )はずなので、縁を同じにして 畠中光享さんのエッチング数点も。

  どうッスか?

 早朝。 今日も暑いけど、綺麗な空だな・・とベランダに出たところ、電話の音。   

 『 ああ、栗山さん? 今 京都? よかったあ~! 助けておくれ。 』   『 ・・はい? 』

 以前から表装でお世話になっている京都市内のお寺さん。
朝、本堂でお勤めしていたところ、内陣の ≪ 蓮如上人 ≫御影軸が バッサ~・・と落ちてきたと。
伸びきった古い紐が切れたのですが、永年掛けっぱなしで乾燥しきっていたので ( どこのお寺もそうですが ) 落ちて パリパリに割れてしまって、巻くことも出来ない・・・・・で、助けのお声がけを頂いたわけです。
         すぐさま参りました。
   タンカで運ぶように車に乗せ、そろ~と持ち帰り、早速 全面修複開始。 < 弘化3年 > とあります。 一度も修複されておらず、おそらく 169年間ずっと掛けられていたのでしょう。  絹本本紙も裂地部分も すっかり粘り気なくサクサクで、触る度に割れていきます。 ・・・恐ろしい。

 本紙を切り外し、敷紙に裏向けに寝かし、霧を吹きます。    ・・・もう、大丈夫。 
    少々動かしても大丈夫です。   さて、裏打ち紙の除去開始。
   裏書きも大事です。  新しい和紙を貼りたたき込み 仮張り板へ。  このまま数日様子をみましょう。 
                  

 いつの間にかもう夕方。   汗を拭き拭き イップクしにベランダに出ると、『 おお! 』 。

      瓦職人のオジサンではないですか。    『 アッついですね~! 』                

 暑い!

ここのところ連日引きこもって表装仕事しております。 今日も 36度か7度か知りませんが・・暑い!
以前も言いましたか、糊をひく時は乾燥が早すぎるのでクーラーは使えず、裂地・紙が飛ぶので扇風機も使えず。
   かと言って、ポタリとの一汗も落としてはならず・・。      ひたすら我慢、我慢、我慢。

 ベランダに出て休憩すると、屋根に登って私以上に大汗かいているであろうオジサン達。 『 ・・・おじさん。 わたしも頑張るよ。 』
この数日、何度その姿に励まされたか。   オジさんは励まそうと思ってもいないでしょうし、いい事してるとも思わず ご自分の為すべき事を粛々と為されているんでしょうが、それが 私には実に大きな力になっていますよ。

  ・・・・でも、今日は何度見てもおられません。     オジさんも休むほど暑いんですか!  お~い、おじさ~ん!

 などと ( 暑さのため ) 叫びながら、孤独に作業。  思案。

仮張り板に張り込めない程大きな作品。  どうする?  芸大の部屋でも借りようか?
    いっそ 西蓮寺に持ち帰って、大きな仮張り板を作って本堂で作業して仕上げようか?

 ・・・・・・それにしても 暑い。   オジさんもいない (?) 。    え~い、今日やってやる!
   どこに張り込む?  壁だ!  壁しかない。   

 やりました・・。    あまりの暑さに、判断能力も薄れ 後先考えずに、大汗かいてやりました。
        家内が怒ろうが何を言おうが、もう遅い・・。

  『 思いっきり、壁に貼ってやったぜ~。 』  『 ワイルドだろ~? 』  

                           ・・・・・住職。  だいじょうぶですか?

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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