『 そうじゃねえ・・。行ってみようか。 』

3月26日、益田市・浄本寺さま 永代経法要のご縁。 何度か布教のご縁を頂いている浄本寺ご院家は、京都学生時代、一年間同じアパートで暮らした後輩でもあり。 母同士も仲が良く、以前からお世話になりっぱなしのお寺。 

普段法座を開いていても、台所世話等々でなかなか本堂に座って聴聞出来ないのが坊守。 座れても最後の一席くらい。 話すのが息子といえども、この度お参りして一度みなさんと同じく朝から夕方まで座ってみてはどうか。 長く人前で座っているのはシンドイだろうし知人もいなくて気も使うだろう。 お忙しいから仲良き老坊守さんとはおしゃべりは出来ないだろうけれども、ご縁深きお寺、行くなら車に乗せて連れて行く。  と、前日夜に母に話したら『 そうじゃねえ。 』 と。   同行決定。

雲一つない快晴。 若坊守さまから親しくご接待を受け居心地良く、朝座を待つ。
ご院家、元気そうで何より。  本堂に出ると多くのご参拝。  美味しいお昼食をご院家と楽しく。 そこに、若坊守さまに連れられて高校生を頭に3人のお子さんがわざわざご挨拶に。 

すべてのお座終えては、老坊守さまにお茶を出して頂きながら久しぶりに暫しの時間。
車のドアを開けるとかなり待っていたであろう母。 

お寺に帰り夕食時。 どなたにもそんな事は聞かないけれども、身内であるので後学の為とも思い、聞いてみる。
『 一日通して色々長く話したけど、何の話が耳に残った? 』 (私)

『 色んな知らない方まで話しかけて下さって、良かった。 』 (母)

『 ・・・・・・・・・・・ 』 (私)

もうお彼岸の頃を迎えました。 3月21日、西蓮寺・彼岸会法座。
お天気は良かったもののまだ寒いこの日、早朝9時半から夕方4時まで。 最年少小学校5年生から、90を目の前にのお方。  3キロを歩いてのお方から、遠方は出雲市から。   おひとりおひとり、ご縁の全てが整って参集して下さった方ばかりです。  共々に仏法聴聞の一日をご一緒させて頂きました。

今わたしたちが目にさせて頂いてある[仏像][絵像]の無かった2500年前の頃の[仏足石]のお話。   学生時代、千葉乗隆先生からお聞きした[十牛図]のお話。   

40分のお話4回の中には、さまざまなお話が行ったり来たり。  すっかりお顔なじみの皆さんという安心感か甘えか、急に思い出した話をしてみたり思わぬ方向にどこまでも進んで帰りにくくなったり・・。
それでもこの日の大きいテーマは忘れてはいませんでしたよ。 『 従果向因 』 。

法座。 ご聴聞はもちろん尊い事ですが、皆で頂くお昼食も大事な時間。  40分近くあるお昼休憩の火を囲んでの談笑も温かい大事な時間。    皆さんが作ってくださる聴聞の場である事を感じます。

お話の最後に、父がカレンダーの裏に書いて坂下掲示板に張っていた墨書を数枚 ご縁に広げながら。  彼岸会前夜に書斎の隅から見つけました。 丸められた沢山の掲示伝道の書。
わたしなど掲示板から外したら、坂道を上がりながらくしゃくしゃにして終わったものとして捨ててしまっていましたが、残していたんですね。  残っていればまた誰かのこころに映る事もあると思っていたかいなかったか・・。    ともあれ、この度数年経ってまた現れ出でたわけです。

そのうちの一枚。 『 有難いから 感謝するのではない。 感謝できる事が ありがたいのだ。 』 

この一日のお話全体を通して、みなさまと味わわせていただきました。    ようこそ、ようこそ。 

そう言えば御正忌前日の15日、久々に旧友《 金 珉 》氏に会いました。 それも島根・三隅町に来た彼に。

数日前電話があり 『 15日に韓国の先生と一緒に三隅町の和紙工房を視察する事になりましたが、居られたらご一緒しませんか? 』 と。 
法座の準備で、出ている場合ではないのですが、遠方から折角近くに来るんですから・・・。 

忙しい彼ら( 金珉くんと、韓国国民大学 林産生命工学科 製紙工学教授・金亨振氏 ) は前日は岐阜の美濃紙工房を視察して深夜に島根入り。  
この日中には大坂に移動して翌日には韓国に飛ぶとの事。     いそがしい いそがしい・・。 

島根県三隅町の≪ 石州半紙 ≫は重要無形文化財、そしてユネスコ無形文化遺産にも指定されています。
江戸時代には多くあった紙漉き場も数少なくなっていますが、公からの紹介をとりつけ訪れたのは伝統工芸士・西田誠吉氏の西田和紙工房。 

西蓮寺から車で10分のところなのに、わたしも初めて お邪魔しました。  表具に携わるものとして非常に興味深くあるのは当然ですが、子供の頃祖父・父が≪ 楮 ≫を栽培出荷して代価に和紙を受けていた事を思い出し、感慨深くもありつつ・・・。

西田氏の惜しみなく製造工程を見せつつ詳しい説明をして下さる事に感謝しながら ( この寒い時期が一番忙しい時期なのに )、これまたベテラン職人のおばさんの使い込んですり減った包丁の美しさにも見惚れます。 

ステンレス乾燥の品もあれば、文化財修復現場からの特注漉きで天日干しのものもあり、 その違いの説明などに、いちいち唸らされた数時間でした。 
彼らも求めましたが、数種類の和紙を求めたわたし。  裏打ちに使うのが楽しみです。

先の西本願寺の御影堂内部修復 の際にも、ここ石州から数万枚和紙が納められたとの事。  知りませんでした。   今度、本山にあがる事あらば、三隅の風土がこの下に張り込められてここを護ってあるんだと胸にしつつ、御内陣・襖を見つめます。  

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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