『 見えているもの 』。

表装のご依頼。
ご実家にあったお内仏(お仏壇)にお掛けされてあった三幅のお軸、本尊絵像・十字名号・九字名号、大きさ50代(縦34.8㎝×横12.1㎝)。 日々永くお礼されてあったであろう事を思わせる古色と少々の痛みが見受けられます。

若きご夫婦の新居には大きな「壇」を安置する事は難しいとなれば、小さいサイズの新しい「壇」とご本尊をお迎えすることは容易でしょうが、ご両親方が朝に晩にこの前に座って両手を合わせておられたご本尊を何とか新居に・・・とご住職に相談され、以前わたしとこの形に表装した事を憶えていて下さったご住職がご縁を繋いでくださいました。

古くても傷んでいてもそんな事は全く問題ではなく、ひとにとってはどうであれ自分にとっては「この仏さま」が大事である、という思いにとても共感いたします。
お会いした事のない方々の物語、お顔を思い出しながらという訳にはいきませんが、数世代の長い歴史の場面場面を想像しながら作業させていただきました。 薬品は使わず湯水で洗いにかけ表面汚れを落とし、 明るい色調の裂地を廻し。

ひとりで作業していると実に「こころころころ」と、なぜこんな事を思い出すんだろうという所までこころは飛んでゆきます。この世で一番「速い」のは想像の翼であるそうですが、まさしく。
遠い昔、お弁当に付いていたひとつの小さなビニールの花を気に入って何度も投げては拾っていた孫の為に、次に帰った時に喜ぶだろう事を楽しみにしてでしょう、お菓子の空き箱いっぱいにビニールの花を集めていた老夫婦。  二人にとってはビニールの花は人と見え方が違って宝物にみえたんでしょうね。一緒に食べていた方たちの花もお願いして貰って集めた宝物。
しかし次に帰った時にはその孫はもうビニール花には見向きもしなくなっていました・・・。

それでも、、いつまでもその箱は大事にとってありました。

そんな事を思い出すまで 「想像の翼」 は、時空を超えて飛んでゆきました。

西蓮寺十七代住職釈知浩   古書画保存修復師

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   ようこそ ようこそ。

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