一本一本の繊維まで描く。

< 三尊来迎和楽図 > と箱書きされた御軸。
高野山にある国宝< 阿弥陀如来聖聚来迎図 > ( 鎌倉時代 )の部分模写図です。
大変美しい図、京都芸大の日本画保存修復模写の方々が描かれたものを何度か目にした事、表装仕事させていただいた事があります。

どれも大きな画面積、原寸大であるのでしょう、これも縦2m40cm・横1m10cmと 普通の床の間には掛りそうにありません。
かなりの傷みの為、この度修復です。   少々驚いた事が・・。
《 描き表具 》 という言葉をご存知でしょうか? 

廻り を織り上げた裂地で飾るのではなくて、裂地部分も筆で描いたもので飾るというもの。 たとえば、鯉の滝登りの画を 同じ筆致で描いた< 滝 >の画を裏打ちして廻し飾るというもの。    そこまでいかなくても、一文字だけでも筆で描いたものを使うとか。
親鸞聖人 < 鏡の御影 >も、散華された蓮花弁 が描かれた和紙を部分的に使用して軸装されてあったように記憶しています。

この御軸の場合・・。 外側の裂地が実は裂地ではなくて、和紙に裂地風に描かれたものなのです。 ( 赤地の雲文様は裂地です。 あまりヨロシクない・・・失敬 ) 

古裂様に実に細密に描かれてあります。   わざわざ、違う裂地を組み合わせてあるかのように 。  は~~・・ため息で見つめてしまいます。

しかし、惜しい事に何故か ある赤い色だけインク系が使用されていて 裏打ち時に霧吹きで色が散って滲んでいます。
何故だ・・・・・何故なんだ~!   と叫んでしまいます。  この度使用するには、霧吹きして旧裏打ち紙を剥がして新しく裏打ちしなくてはなりません。  そうなると、今以上に滲みが出て目立ってきてしまいます。

残念ながら、ホントに残念ながら・・ご依頼者とご相談のうえ、この度 裂地に替える 事になりました。
強度の事もあり・・・せめて復元織りの良き裂地を。

金襴は使わず時代の重みを感じる ・・・・・  今まで以上に美しい御軸に仕上げます!

 

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

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   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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