気仙沼からのお便り。

ご縁というのは不思議なもので・・と知ってはいましたが、まことに「 つながり 」は 思議を超えるものです。
以前読んだ文章中の方と出遇う事など、想像もしません。

3月11日、あの東北大震災から3年経って 今日15日。 宮城県気仙沼のお方からお便りを頂きました。
『 菅原文子さん 』。 あの日、手を繋いでいたご主人を津波がさらい行方不明、 居間におられたご主人のご両親も亡くなられました。     あまりの喪失感にただ茫然の日々を過ごされる中、自分にはこれしかないと立ち上がり、ふたりの息子さんと共に一か月半後には家業の酒屋の仮店舗を再開。     地酒に手書きで 《 負げねえぞ気仙沼 》 のラベルを貼り地元で奮闘。     そんな中 2011年夏、京都の和洋紙販売会社「 柿本商事 」が企画した手紙コンクール『 恋文大賞 』への応募を知人に勧められ、行方不明のご主人へラブレターを書き応募・・・・大賞を受賞。

そのお手紙を読んで感動された竹尾女史( 本願寺浄書にて以前からお世話になっている私 )が、承諾を得て このお手紙を墨書してグループ展に出品。( この裏打ち表装を頼まれ、大変大きくて 島根の本堂で作業した事を思い出します )       それを見て喜ばれた菅原さんが、竹尾さんに 『 玄関に飾りたい言葉があるので、是非 書いて頂きたい。 出来れば軸装にして頂きたい。 』 と。

そのご相談を受け、竹尾さんと一緒に裂地選び・寸法決めをして、表装させて頂きました。  
その文言、《 縁ありて花ひらき 恩ありて実を結ぶ 》。 
明るく、華やかな花柄にして欲しいとのご依頼があったと聞いています。

その掛軸が手元に届いたとの御礼状と共に、宮城の地酒が今日届けられた訳です。   過ぎたる品、恐縮です。
菅原さんも達筆です。     悲しみとともに 多くの縁あった方々への感謝の言葉。

ご主人。  一年三カ月経って帰ってこられたそうです。
最後に撤去されたガレキの下で衣服もそのままで、本人と判別出来るお姿で。   奇跡的と言われたそうです。

『 一年三カ月・・わたし達が朝に晩に毎日通る道のすぐ脇の建物の中。  家族と会うためにジーッと頑張っていてくれたと思うと・・・(中略)・・・これからは安心して泣き、安心して手を合わすことができます。
心おきなく生きてゆけます。 』   
お世話になられた真宗僧侶の方へのお手紙。 少し前読ませて頂いた文章中に。

いまだ行方不明の方 多く、以前の自分にたちかえる事の出来ない方 多くおられる事と・・・。

願わくば。  ご縁・・つながり 。  

多くの人、あらゆる人・ものと繋がり支えられてあるという事は、同時に あらゆる人・ものを支えてあるという事。歩む足に。        『 ひとは 独りではあり得ない 』 と、あゆむ足に。

 

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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