『 そ・・そうですか? ははは・・。』

 『 ・・・入らなかったら、レンタカーにしなくては・・。 』
恐る恐る訪ねた下京区のお寺。

 本堂を改築した時新調して以来、仕舞いこんで殆ど立てていない≪ 襖 ≫。
下がり藤紋・雲母押しの≪ 襖 ≫。
引き取りに来るならあげる、いらないなら処分すると。   それは勿体ない!
 何かに使える。  ニ曲屏風にも出来る。 なんなら学生の大きな作品のパネル土台にも出来る。  『 頂きます! ちなみに何センチありますか? 』 

 お寺のものなので< 180cm×122cm >と大き目との事。
大抵のものを運べる様に ( 普段は無駄に大きい車に乗っていると冷ややかに見られていると知りながらも乗っている ) 大きい荷台の車だが、122cmか・・・・斜めにして入れればギリギリいけるか・・。   とりあえず一枚入れてみる。    ・・入らない。

 諦めてレンタカーで出直すか・・いや。  勿体ない。  ほんの数cmだ。  ( 住職が見つめる中しばらく悩む。 )

 よし! 『 木槌ありませんか? 縦縁を外してみます。 』  『 なるほど。 』
カン・コン・カン・コン・・・なんとかうまく片方外れた。   どうだ。  ・・入らない。

 よし! もう片方も外そう。  カン・コン・カン・・どうだ。       入った!     ビリビリッ。
    なんて事だ、ギリギリすぎて釘が車の内装を引っ掻いた。  『 大丈夫かい? 』

 よし!  釘も全部抜こう。   ギコ・ギコ・グイ・グイ・・。    どうだ!  入った。  まっすぐでは入らなくても斜めにして入れれば微かに余裕もある。
   『 入りました。  え~と何枚ありますか?  は・・八枚!? 』 

 困った。  四枚位はこのままいけるが、かさ高くなると斜め入れが出来ない。
     なんとか一度で運びたい。   どうする、栗山。

 よし! 運転座席と助手席を前に出して、さらに車の中でそこにたて掛ける様にすれば、後ろからの入り口が広がるはず・・。     ドタン・バタン・ズリ・ズリ・・。      よし、うまくいきそうだ。

 たまたま通りかかったオジさんが、途中からずっと見ておられました。
何度も行きかけては戻って来て、見ておられました。  なんだこのオジさんは・・と思って作業に汗していましたが、最後の一枚が入ってドアを ボン! と閉めた時、ニコヤカに近付いてきたオジさんが言いました。

 『 いや~今日はいいもの見せて頂きました。
     何かにブツカル度に何とかされて、何とかなるもんですねえ。
            ありがとうございました。 』

      

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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