
『 300年の孤独 』。
掛け軸修復していると、何百年も秘められていた言葉に出会う事があります。
≪ 親鸞聖人御絵伝・四幅 ≫ を預かる時、その裏書きに 『 寂如 』 とありましたから、本願寺第14代門主の時下附されたものとは分っていました。
修復をはじめて、軸棒を開いて見ると当時表装された表具師の書付が出てきました。
たまにあるんですが、ここまで文字数の多いものは珍しいです。
『 正徳3年 』 とありますから、1713年。 300年前の書付です。
300年間、誰にも見られる事なく裂地と和紙に包まれて隠れていました。 もちろん表具師は知っていました、何百年後の修復の時には、その未来の表具師が目にすると・・・・。 木が枯れて軽くなっていますが、重さを調節して この軸棒を使おうと思います。 八双は、残念ですが痛みが酷いため、新しい物に替えます。 その旨、依頼寺院に伝え 届けるつもり
です。
この次、修復されるのは100~150年後でしょう。
その時、この軸棒の書付が久々に読まれる事でしょう。
その時の表具師に恥ずかしく無い仕事をしたいものです。
私の事は何も書き加えることなく裂地と和紙で封印します。