『 ちょっと、そこまで。 』

 雪にならず、雨の降る穏やかな年明けでした。
早朝、お参りくださった3人の方と寺族と 計6人での < 元旦のお勤め >。
午前のうちには、年始のご挨拶とお参りの方がチラホラ。      伝えておかなくてはと、初めて息子さんを連れての方。      体調すぐれないご主人にかわって、と奥さん。    庫裡には来られず、気づかないうちに本堂へのお参りだけして下さった方。

 夕べのお勤めは、毎年のように来てくれる 姉家族みんなとで 8人の賑やかさ。
その後は夜遅くまで食事しながら笑いあい・語り合い・・・。

 < 家族 > < 絆 > < つながり > という言葉をいつになく多く耳にした昨年でした。
都会と田舎を行ったり来たりしていて 確かに違いを感じる事があります。 ひとの出会いの濃い薄い・・深い浅いといいましょうか・・。

 都会( どこからが都会かというのもありますが・・。)では、家族以外の方の詳しい事情は聞いてはいけない。 聞かれたくない。 見えているところだけで 付き合っている事が多いです。  『 息子さん、どこの大学に入られたの? 』 『 ご主人、何のお仕事? 』 『 奥さん、何処のご出身? 』 『 ご兄妹は何人? 』 ・・・。  尋ねるひとを疎ましがるような。
 もちろん よほど仲の良い友人間では別ですが、互いに知っている同志の広さは 田舎とはくらべ様も
ありません。
 
 田舎の方はよく聞きますよ。  よ~く 尋ねます。 そして 丁寧に答えます。 
聞かれてない事まで 答えます ( 笑 )。  『 あら、今日はどちらに行かれます? 』 と聞かれて 『 ちょっとそこまで。 』 なんて答えません。 『 腰が痛いんで病院に行って、郵便局に行って、あとで牛乳と電池を買って・・夕べ電池が切れてねえ・・。 』  ってな具合ですかねえ。 大げさ?      そのうえ 聞いた方、これまたご丁寧に それをアッチコッチで喋って伝え?ます。  いいですねえ。     大事な事ですねえ。

 あ~疎ましい!って思う事もあるかと思いますが、互いに抱えているバックボーンを知って付き合うと、そのうち話を聞かなくても大体 そのひとの思っている・抱え込んでいる事が知られてきます。  どこが痛いか・・なにを悩んでおられるか・・なにを楽しみにしておられるか・・。   
 たとえ 新聞に出る様な悪い事をしてしまわれても 『 ・・・あのひとになってみたら、そうしてしまうかも知れないなあ・・。』  と思いやる事が出てくるかもしれません。   < 家族 > みたいなもんですかねえ。それに近いような。

 同じものを見て、聞いて 経験して、同じことで笑って、泣いて。   黙っていても何時間でも一緒にいれるほど 分かりあえている 家族。      < 絆 >も < つながり >も、互いに知り合い・分かり合うこと無しに 生まれるはずはありません。      家族の中にさえ < つながり > が薄れてくる昨今。     危ういからこそ叫ばれるのでしょう。   都合のいい時だけ < 絆 > を求めがちな身勝手さを持っているわたしだという事を 深く心得ていなければなりません。        さて、  みなさんの 家族、いかがですか?

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

Copyright © 2010 Sairen-Ji Temple. All rights reserved.