そう、歳とったんですよ。

 『 表装を教えて下さい。 』   と、以前から言っていた彼が来ました。

今までにも 色んな人が習いに ( 体験に ) 来られてます。    老若男女・国籍種々・・・・・韓国のミン君・パクちゃん、 中国の マ君・テキ君、 松浦女史、 迎田君、 それに 80歳の木村さん。
     教えに行くのと違い、家に来られて・・というのは、一対一なので < 弟子と師匠っ! >って感があります。          ただ技術を教えるだけでなく 色~んな話をしながら ふたりの時間が過ぎていくもので。

 徳川家康の <三方が原>の戦いの話になりました。
武田信玄が 大軍を率いて 悠々と家康の城の前を通り過ぎていきます。    今 戦っても勝ち目は無いので 悔しくても籠城を・・と 進言する家臣らを振り切り、31歳の若さの家康は 戦いを挑み 打って出ます。
         ・・・・結果は 惨敗。    脱糞までして ( わたしでもそうでしょう・・ ) 命カラガラ 城に逃げ帰ります。       その後が さすが家康。      その ぼろぼろ姿で憔悴しきった 幽霊のような自分を 絵師にすぐ 書かせたというのです。     そして、生涯 その絵軸を そばに置いていたとか・・・・。

    『 一時の感情で、 計画なしに 無茶をしては いけない。 』

 自分への戒めの為に たまに開いて見ていたのでしょうか。    

 まっ。       実は私にも そんな 軸があるんよ。 それは、表装始めて 一番最初にひとりで 仕上げた軸。
中身本紙は、人様のものをするなんて とんでもないんで 親父の書なんだけど、これが また。
 今 見たら 裸足で逃げたくなる様な ヒドイ 出来栄え。    やり直すのは 簡単なんだけど、置いとくの。
家康の軸みたいなもんで、自分への 戒めとして。    ・・・だから この 軸も たぶん 一発で見事なものにはならないだろうけど、仕上がったら 置いとこうな。     出来栄え以上に 大事なものになるで。

   ・・・・な~んてね。
本紙に霧吹いて シワとるのに、あんまり 苦労してる姿を見てると 自分の以前の姿が重なって、愛おしくもあり   励ましてやりたくなります。     ・・・・・・・・・・・  ・・・・・・・・・これって。

  

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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