薪割り。

 27日は一日 <マキわり> でした。
柄が 1m程ある斧で、本格的な <薪割り> です。

 ここ西蓮寺では まだ 裏山からの薪や枯れ木・杉枝・竹などを焚いて、お風呂を沸かしています。
下から下から沸いてきて、冬場の心地よさと言ったら たまりません。      それに、お風呂を沸かしつつ おき炭を堀り炬燵に持ち帰り 夜遅くまで温まり、ついでに 七輪を横に置いて シイタケに パラリと塩を振って・・・
   ・・・いいですねえ。

 この度の 薪割りは、お隣さんのお蔭です。
随分以前に 引っ越しされていて、空家が そのままだったのですが いよいよ 家を解かれる事になり、その 廃材木を頂けることになったのです。     とっても嬉しい事で 助かります。

 このお家、重機で ガガガ・・・と倒すのでなく この家の主である おじさん <70にはなっておられないと思いますが> が ひとり人力で解いておられるんです。    もう何日目でしょう、いや 大変ですよ これは。
 その おじさんが もくもくと作業される音を聞きながら、私も  パッカーン ・・ パッカーン ・・ です。

 頭に浮かんできたのは、昭和60年に 今の庫裡を建てる為に 旧庫裡を 重機で ガガガ・・と倒した時の話です。    私はその場にいなかったのですが、今は亡き・当時 80歳をこえた祖父母が、倒されていく我が家を見ながら 泣いていた・・という事を 父から聞きました。

 そうですよねえ。
苦しい生活の中 沢山の子供を育てあげた思い出が そこかしこに、柱や縁板一枚にまで しみ込んでいますから・・・・。       新しい家が建つ喜びの思いとは別に ずっと このまま この家に住んでいたかった様で。

 そういえば もうひとつ。
わたしと家内が 一緒になり 10年あまり住んでいた、 はるばる親が来てくれても 布団を敷くスペースもないような 2間の狭いアパート。
   そろそろ洋服が気になりはじめた 小学生の娘と、 紙袋と新聞を身体中に巻きつけ 何かになって遊ぶ息子をつれて 一部屋おおいアパートに引っ越す事になりました。      引っ越し当日 大家さんに部屋を引き渡す為、家内と共に最後の掃除をしに ながらく住んだ部屋に入りました。     落書きのある床を 雑巾で拭きながら、家内が 泣いているんです。    さっきまで 引っ越しの大わらわで 賑やかだったのに。

       『 どうしたん? 』 ・・・・・・・    『 ここに 何にも荷物がないのが 悲しい・・。』

そおやなあ。   そう言われればなあ。
見渡す程でもないけど あらためて 見渡すと、色んな場面が 見えてきました。

 隣のおじさん。   この家を建てるのも ご自分で こつこつと建てられたとか・・・・それも驚きますが。
だったら、思い入れ・思い出は わたしになんか はかり知れないなあ・・・
 と 思いつつ。     その思い出に 斧を振り上げてるんだ・・と。

       すみません 、  おじさん  。

西蓮寺十七代住職釈知浩

古書画保存修復師

緑に囲まれた山寺

  春 鳥の声、 夏 蝉の声
   秋 虫の声、 冬 雪の声
 
     ようこそ ようこそ 

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